糖尿病と歯周病の深い関係|重症化しやすい理由と抜歯につながるケースを徹底解説

糖尿病と歯周病の関係を知っていますか?
糖尿病を患っている方にとって、歯周病は決して他人事ではありません。
実は、糖尿病と歯周病は互いに深く影響し合う関係にあることが、近年の研究で明らかになってきました。糖尿病があると歯周病になりやすく、逆に歯周病があると血糖値のコントロールが難しくなるという「負のスパイラル」が生じてしまうのです。
歯周病は「サイレントディジーズ(静かなる病気)」とも呼ばれ、初期段階では痛みなどの自覚症状がほとんどありません。そのため、気づいたときには重症化していて、最悪の場合は抜歯に至ってしまうケースも少なくないのです。
この記事では、糖尿病と歯周病の深い関係について、重症化しやすい理由や抜歯につながるケースまで、詳しく解説していきます。
歯周病とは?基本的な知識を押さえましょう
歯周病は、歯を支える歯ぐきや骨(歯槽骨)が炎症を起こし、症状が進行すると歯を支えられなくなってしまう病気です。
原因は、歯の表面に付着している「プラーク(歯垢)」と呼ばれる細菌の塊です。プラークは歯磨きが不十分な部分に蓄積され、歯肉に炎症を引き起こします。この段階で適切な治療を受ければ、歯肉を元どおりに治癒することができます。
しかし、放置すると歯と歯肉の間の隙間(歯周ポケット)が徐々に深くなり、歯を支える土台となる骨(歯槽骨)が溶けて歯が動くようになります。そして最終的には、歯が自然脱落してしまうのです。
歯周病の進行段階
歯周病は以下のような段階を経て進行していきます。
健康な状態では、歯と歯茎のすき間(ポケット)もなく、歯茎が引き締まっています。
歯肉炎(初期段階)になると、歯茎の発赤や腫れが出現し、歯磨き時に出血することがあります。この段階では適切なケアで回復可能です。
軽度歯周炎では、歯周ポケットが形成され(深さ4mm程度)、歯茎の退縮が始まります。口臭が気になり始め、歯石の形成が目立つようになります。
中等度歯周炎になると、歯のぐらつきが出現し、歯周ポケットがさらに深くなります(深さ6mm程度)。骨吸収が進行し、歯茎からの出血が頻繁になります。
重度歯周炎では、著しい歯のぐらつきがあり、歯の喪失リスクが高まります。重度の骨吸収が起こり、膿が出て口臭が悪化します。場合によっては発熱など全身症状が出現することもあります。

歯周病で抜歯と言われたら知っておきたい5つの選択肢
歯周病が進行し抜歯を勧められた場合でも、状況によっては複数の治療選択肢があります。それぞれの特徴や考え方を歯科医の視点でわかりやすく解説します。
なぜ糖尿病があると歯周病になりやすいのか

糖尿病を患っている方は、そうでない方と比べて約2.6倍も歯周病にかかりやすいという研究データがあります。
これには、いくつかの明確な理由があります。
高血糖による血管への影響
高血糖状態が続くと、歯周組織の微小血管が傷つきます。
栄養や酸素の供給が低下し、歯茎の抵抗力が著しく低下してしまうのです。これにより、歯周病菌の増殖を促進する環境が形成され、血管壁の肥厚による血流障害や組織の修復能力の低下が起こります。
免疫機能の低下
糖尿病になると、白血球の機能が低下します。
サイトカインバランスの乱れや抗体産生能の低下により、歯周病菌への抵抗力が弱まってしまいます。そのため、感染しやすく、重症化しやすい状態になり、通常より治療に時間がかかるのです。
創傷治癒の遅延
糖尿病があると、コラーゲンの合成障害から歯周組織の再生能力が低下します。
血管新生の抑制、細胞増殖能の低下、組織修復因子の減少などが起こり、一度傷ついた歯周組織の回復が遅れてしまいます。
AGEs(終末糖化産物)の影響
AGEsは糖とタンパク質が過熱されてできた老化物質です。
強い毒性を持ち、老化を進行させる原因物質と言われています。高血糖状態が続くと、体内でこのAGEsが増加し、歯周組織の炎症を促進、組織の弾力性を低下させます。さらに血管壁を傷つけ、歯周病の進行を加速させてしまうのです。
歯周病が糖尿病を悪化させるメカニズム

歯周病は糖尿病の第6の合併症とも言われています。
一般的に糖尿病の三大合併症として、「網膜症」「腎症」「神経障害」があげられますが、これだけではなく、「動脈硬化性疾患」「足病変」もあり、さらに第6番目の合併症として「歯周病」があげられているのです。
炎症性サイトカインの増加
歯周病は歯ぐきの中で起きている慢性炎症です。
この慢性炎症により産生される炎症性物質(炎症性サイトカイン)のうちの1つ(TNF-α)がインスリンの働きを妨げてしまうため、糖が血中から組織に移行できず、その結果血液中の糖(血糖)が高い状態(高血糖)となり糖尿病が悪化してしまうのです。
歯周病菌は腫れた歯肉から容易に血管内に侵入し全身に回ります。血管に入った細菌は体の力で死滅しますが、歯周病菌の死骸の持つ内毒素は残り血糖値に悪影響を及ぼします。
インスリン抵抗性の増加
歯周ポケットから出て血流にのった炎症関連の化学物質は、体のなかで血糖値を下げるインスリンを効きにくくします。
これを「インスリン抵抗性」と呼びます。細胞のインスリン感受性が低下し、インスリンシグナル伝達の障害、糖取り込みの低下、肝臓での糖新生の増加などが起こり、血糖コントロールは悪化していきます。
合併症の進行への影響
歯周病による炎症は、糖尿病の合併症の進行にも影響を及ぼします。
細小血管障害への影響として、網膜症の進行リスク上昇、腎症の悪化、神経障害の悪化、微小循環障害が悪化し組織低酸素状態が促進されます。大血管障害への影響として、動脈硬化の促進、心筋梗塞のリスク上昇、脳卒中の発症リスク増加、血管内皮機能障害や血管炎症が慢性化します。
歯周病治療で血糖値が改善する可能性
朗報があります。
最近の研究では、歯周病の治療をすると血糖コントロールが改善するという成果が数多く報告されています。歯周病を合併した糖尿病の患者さんに、抗菌薬を用いた歯周病治療を行ったところ、血液中のTNF-α濃度が低下するだけではなく、血糖値のコントロール状態を示すHbA1c値も改善するという結果が得られています。
実際、日本糖尿病学会では、糖尿病診療に際して「歯周治療は血糖コントロールの改善に有効か?」という診療上の疑問に対して、『Ⅱ型糖尿病では歯周治療により血糖が改善する可能性があり推奨される』とし、糖尿病治療において強く推奨する(推奨グレードA)と提言しています。
歯周病治療の内容

治療に際して、歯周病は口の中全体の歯で同時に進行していくため、全ての歯で歯周ポケットの深さを計測するポケット検査や、プラークの付き具合の検査を行います。
治療ではまずブラッシング指導により患者さん自身でプラークを取り除けるような練習を行います。プラークを形成する細菌が歯肉で引き起こしている炎症を減らすのが目的で、これは「プラークコントロール」と呼ばれ、歯周病治療の中心となります。
患者さん自身によるプラークコントロールが基本となりますが、その上で歯科医院で定期的に受診を行い、歯周ポケットの中に付着しているプラークや歯石を超音波振動機器や手用器具を用いて取り除きます。これは「スケーリング」といい、歯科医療従事者が行う重要なプラークコントロールです。
一旦治療が終了しても、歯周病は再発することが多いため、「メインテナンス」もしくは「サポーティブセラピー」と呼ばれる定期的なチェックとケアを行っていくことが必要です。
抜歯につながるケースとは?
たとえ歯自体は健康であっても、歯周病が重症化すれば、歯がぐらついて食事にも支障をきたしてしまいます。
さらに進行すると、歯は病的な移動を起こし、口腔内全体の噛み合わせにも悪影響を及ぼしてしまうため、やむなく抜歯をおすすめする場合があります。
抜歯が必要になる状態
歯周ポケットが深くなるほど歯を支える骨が失われ、最後は支えきれずに抜歯に至ってしまいます。
重度歯周炎では、歯槽骨の大部分がすでに失われています。歯を支えること自体が困難になり、抜けてしまう可能性がある状態です。また、歯根に膿が溜まっている場合は、口臭がひどくなる原因にもなります。
糖尿病を患っている方は、歯周病が進行しやすく、重症化しやすい傾向にあるため、特に注意が必要です。
早期発見・早期治療の重要性
歯周病は初期段階では自覚症状がほとんどないため、定期的な検診による早期発見が非常に重要です。
以下のような症状がある場合は、早めに歯科医院を受診しましょう。
- ハブラシの時に出血する
- 朝起きたときに歯肉に違和感がある
- 口臭を指摘された
- 歯肉が下がって、歯が長く見えるようになった
- 体調が悪くなると歯肉が腫れる
- 歯の揺れを感じることがある
糖尿病患者さんが気をつけるべき予防と対策
糖尿病を患っている方にとって、歯周病の予防は非常に重要です。
日常的な口腔ケアと定期的な歯科受診を心がけましょう。
適切な歯磨き方法

歯ブラシの選び方(毛の硬さ、ヘッドの大きさ)に注意し、正しい歯磨き圧を守りましょう。
歯と歯茎の境目を意識した磨き方を心がけ、磨き残しやすい部分への注意が必要です。適切な時期に歯ブラシ交換をし、1回の歯磨き時間は最低3分以上を守りましょう。
定期的な歯科検診とメンテナンス
3〜4か月に一度の定期メンテナンスで、インプラント周囲炎を予防し、咬合の調整・クリーニングまで含めて長期的な安心を得ることができます。
歯科医院でのプロフェッショナルケア(PMTC)により、セルフケアでは取れないレベルで歯面の汚れを取り除くことができます。
血糖コントロールの重要性
Ⅱ型糖尿病患者ではHbA1c6.5%以上になると、歯周炎の発症や、歯槽骨吸収の進行のリスクが高まることが報告されています。
糖尿病治療により歯周組織の炎症は改善する事があるため、歯周病治療、糖尿病治療の双方向からの治療により双方向への治療の有効性が期待できます。
まとめ:糖尿病と歯周病の関係を理解し、適切なケアを
糖尿病と歯周病は、互いに悪影響を及ぼし合う「負のスパイラル」の関係にあります。
糖尿病があると歯周病になりやすく、歯周病があると血糖値のコントロールが難しくなるという悪循環が生じてしまいます。しかし、歯周病の治療をすることで血糖値が改善する可能性があることも明らかになっています。
歯周病は初期段階では自覚症状がほとんどないため、定期的な検診による早期発見・早期治療が非常に重要です。重症化すると抜歯に至ってしまうケースもあるため、日頃から適切な口腔ケアを心がけ、定期的に歯科医院でメンテナンスを受けることが大切です。
糖尿病を患っている方は、歯周病のリスクが高いことを理解し、血糖コントロールと口腔ケアの両方に注意を払いましょう。
いまいずみ歯科では、糖尿病を患っている方の歯周病治療にも力を入れています。丁寧なカウンセリングと分かりやすい説明で、治療内容・期間・費用を事前にしっかり共有し、ご納得いただいてから治療を始めます。「削らない・抜かない」治療を心がけ、天然歯の保存を最優先にしています。
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著者情報
いまいずみ歯科 院長
今泉 朋久(いまいずみ ともひさ)

【経歴】
館林市出身
日本大学松戸歯学部卒業